三山 雅子 教授
学科での20年
Mitsuyama Masako
三山 雅子教授
1957年北海道生。北海道大学大学院教育学研究科博士後期課程単位取得退学。1995年同志社大学文学部社会学科産業関係学専攻専任講師(着任)。2016年より現職。主な担当科目は「労務管理論(1)・(2)」「産業関係実習Ⅰ・Ⅱ」。
20年前はネットもなく、ただ労務管理論を担当するのだということだけを理解して赴任した。この20年の変化は激しかった。パート等の非典型雇用は、女性についていうならば今日、典型雇用になってしまった。また、グローバル化の波は凄まじく、私のように日本の労使関係をフィールドとする者も外国に出かけるようになった。産業化された国では非典型雇用が増えている。だからか、ドイツで開催された precarious female work をテーマとするワークショップに参加する機会を昨年与えられた。
外国に行ってみると、いろいろと驚くことがあった。 precarious work を主題とする研究会であったからもちろんその労働状況の改善も話題になるのだが、「そういうことをしたら、失業が増えるのではないか」とか「失業するよりも仕事があった方がよいのでは」といった日本でよく聞く質問・意見はドイツ側からはでなかった。日本とは議論の出発点がまったく違うことに驚いた。また、働くことと暮らすことを結びつけて発言していることも強く印象に残った。労使関係研究は生活研究でもあるようであった。これは歴史家の参加が多かったからなのかもしれない。一緒に行ったメンバーによると、ユルゲン・コッカ、ハルトムート・ケルブレ、アルフ・リュトケといった錚々たる歴史家が参加していたとのことであった。時間とともに社会は変化する。同時代であっても異なる社会にあっては労使関係も異なる。このような変化を掴まえると同時に、変化の中にあって変化しないこと、通底しているものを掴むことが変化を生きる上で不可欠なのだと感じた。