阿形 健司 教授
資格を取得しても、就職に大きく有利にはなりません。
一口に資格といっても、半ば趣味的なものから専門的なものまで、多岐にわたっています。国家資格だけで600 以上、これに簿記や秘書検定などの民間資格を加えると膨大な種類になり、資格の全体像を把握するのは困難です。
そこで現在は看護師資格に焦点を絞り、資格保持者がどのようなキャリアを歩んでいるのかを調べています。看護師は病院でキャリアを重ねていくイメージがありますが、実は介護系の仕事や一般企業の事務職、看護学校の教員に転職する人など職歴は多様です。このように通念に反する結果が出るところが、調査研究のおもしろさの一つです。
一方で、大学生の資格志向は根強いですが、現実には資格をもっているだけでは就職に大きく有利にはなりません。実務経験をもたない学生の資格は実力の証明にはならないからです。資格取得に奔走するより、何か一つのことに打ち込み、成し遂げた経験を積むほうが就職に役立ちますよ。
あがた・けんじ
学歴とは異なる職業参入ルートとしての職業資格の研究。日本にはさまざまな内容や水準の職業資格が存在するが、それらが労働市場でいかなる役割を果たすのかを、社会学的な観点からデータに基づいて検討している。
research map受験生へのメッセージ
皆さんにとって、「学ぶ」とはどういうことでしょうか。歴史の年号や化学反応式を記憶したり、正確に英文を解釈したり、古今東西の古典を鑑賞することでしょうか。もちろん、これらの活動は教養として重要です。けれども、学ぶことの意義は、私たちをとりまく世界を批判的に認識し、それを通じて自ら何がしかのものを創り出すための素養を身につけることにあると私は考えます。大学で学ぶことの真髄は、対立する諸説を検討しながら、自分が納得のいく答を導き出すことでしょう。その答は決して唯一の正解ではなく、立場や価値観が異なる人は、正解とは見なさないかもしれません。しかし、現実の世の中では、誰からも認められる唯一の正解があるとはかぎりません。複数の答が拮抗・対立する中で、よりよいと思われる答を模索する作業が続いているのです。あなたがこの世界で生きていくための、よりよい答を選択できるように、ぜひ大学での学びに挑戦してほしいと思います。