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梶谷 真也 教授

働かないことが健康度を上げる?下げる?

022_ja_02_梶谷真也教授  (90351)

労働などの生産活動は人々の暮らしを支える一方で、睡眠や休息は人々の健康維持に欠かすことができません。ただし、人々に与えられた時間には限りがあるため、生産活動と睡眠や休息とはトレードオフ(二律背反)の関係にあります。「長時間労働によって健康を損なう」という社会問題は、このトレードオフに起因するものといえます。では、労働することから解放されると、人々は健康になるのでしょうか?

この疑問に答えるため、オーストラリアの中高年男性のデータを使って分析したことがあります。この分析で、「働きすぎ」は健康度を下げるけれども、「働く」ことは健康度を上げるという結果を得ました。この結果は、与えられた時間内で「ほどほどに働く」ことが健康維持の秘訣であることを示唆しています。

日本の多くの企業では、「定年年齢に達すれば退職しなければならない」という定年退職制度を導入しています。人々の健康度は定年退職後にどれぐらい変化するのでしょうか?そもそも、人々は定年退職によって生じた「空き時間」を何に使っているのでしょうか?これらの問いについて研究を進めています。


かじたに しんや

大学院修了以降「高齢者が働くこと」について経済学の視点から研究。近年は、子どもや若者も研究対象に含めて、「時間の使い方」に関する研究に取り組んでいる。

research map

受験生へのメッセージ

「どの学部を受験したらよいか?」と悩む受験生も多いかと思います。私もそのうちの一人でした。私が高校生の頃の日本は不況の真っ只中で、雇用不安に関する議論がマスメディアを中心に盛んに行われていました。当時の私はそうした議論に興味を抱き、産業関係学科に入学しました。産業関係学科は、雇用関係(雇う側・雇われる側に関するさまざまな問題)を経営学、経済学、社会学、法学などさまざまな学問領域から学ぶことができる場所です。

授業では、さまざまな学問領域の視点から雇用に関する問題についての解説や議論が展開されます。私の場合は、これらを経験する中で、高齢者の雇用問題について経済学的な視点からデータを使って考えることに興味を持ちました。産業関係学科を卒業した後は、大学院に進学し、経済学をベースとして高齢者雇用に関する研究に取り組みました。

ほとんどの受験生は将来社会人として働くことを経験するため、あらかじめ「働くこと」を論理的に学ぶことは将来の実践に有用だと思います。さまざまな学問領域から「働くこと」を考えるという産業関係学科での学び方は、将来の自分の働き方について深く考えることにつながります。