松山 一紀 教授

日本人労働者は会社が大好き......ではないのですか?

松山 一紀 教授
日本人労働者は、真面目で勤勉だと言われます。自分よりも会社のことを優先させる傾向が強いようです。ですので、きっと日本人労働者は会社のことが好きで、忠誠心も強いのだろうと思っていました。しかし、調査をしてみると、国際的にみて、日本人労働者の働く意欲や帰属意識の強さは最低レベルなのです。なるほど、失われた20年の間にそうなってしまったのかと思って、日本企業が一番輝いていた70年代まで遡ることにしました。すると、あまり変わらなかったのです。政府が行った国際比較調査の結果をみると、今勤めている会社を「変わりたいと思うことはあるが、このまま続けることになるだろう」と回答している人の割合が、他の先進国に比べてダントツに高いことがわかりました。この、どっちつかずの回答は一体何でしょう。日本人労働者は実は、会社のことがあまり好きでもないのに、やむを得ず働いているのでしょうか。こんな働き方で、会社の生産性は上がるのでしょうか。そして、労働者は幸せなのでしょうか。そんなことを考えています。

まつやま かずき
大学卒業後、松下電器(現パナソニック)に入社しました。そこで、8年間人事の仕事に携わりました。こうした経験もあり、組織の中の人間行動に興味をもつようになりました。それが今の帰属意識研究やフォロワーシップ研究につながっています。また、経営戦略と人材マネジメントの関係にも興味をもっています。
researchmap

受験生へのメッセージ

最近、フォロワーシップの研究をしているうちに、私たちの人格には、従我と観我と呼びうる二つの自我システムが存在していると考えるようになりました。ここで従我とは、他者からの刺激に自動的に反応してしまう自我システムを指しています。一方観我とは、そうした従我を抑制し、統御する自我システムのことです。そしてフォロワーシップは、従我と観我が織りなすプロセスということになります。その観点で言うと、受験勉強は主に従我形成のための取り組みだと考えられます。「794年」という他者からの刺激に対して、「平安京遷都」という言葉で自動的に反応できるような従我を形成しているわけです。一方で、受験勉強は観我の形成にはあまり役に立ちません。観我を形成するためには、他者の言動を鵜呑みにするのではなく、常に懐疑的な目を持ち、建設的に批判するといったプロセスが必要です。まさに大学とは、こうしたプロセスを経験するための場所だと思っています。理想的な観我を形成するために、ともに切磋琢磨しませんか。