シリーズ:大学院で学ぶ(4)

シリーズ:大学院で学ぶ(4)

2020-06-26

エピソード9(岩月真也)

 助教の岩月です。私は2005年4月に産業関係学の大学院に進学しました。気が付くともう数年で15年が経ちます。この文章を書きながら驚いています。わずかな仕事しかできていないことにも気が付いてしまいました。

 入学のきっかけは、もう少し勉強をしたい、という単純なものでした。学部時代は部活動に専念しておりまして、授業には出席していたものの、じっくりと先生から出された課題と向き合う時間を持てずにいたからです。また、将来は中学校か高校の先生になろうかと考えていましたので、生徒に教える立場になる以上、きちんと勉強をしておきたいとも考えていました。

 大学院の授業内容は、文献の輪読が主な内容でした。内容をきちんと把握できているのか(きちんと読めているのか)、何が面白かったのか、何が分からないのか、どうすれば分からない箇所が分かるようになるか等を議論していました。この過程で文献を読む力、研究テーマを設定する際の考え方、既存の研究の弱点を見つける力、明らかにされていない事柄に対するアプローチの方法等を学ぶことができたと思います。

 特に、既存研究の不備を見つける力は本当に大事だと思っています。世の中に流布している言説は、思い込みや印象に基づく言説だけではなく、一定の研究成果にも基づいている言説があるものの、その研究成果をよくよく検討してみると何かしらの不備や不完全さが見つかります。こうなると世の言説を無批判に受容するのではなく、批判的に検討することができるようになります。通常、人付き合いをする上で、よく耳にする言説に対して批判的にいちいち検討していると嫌がられます。しかし、大学院の授業では忌憚のない言論空間が確保されておりますので、どうどうと批判的な検討が可能であり、また先生方も生き生きと自由な議論を展開されます。私はこの日本において、言論の自由が実質的には相当程度保障されていないと常々感じておりましたので、言論の自由が相当程度保障されている産業関係学専攻の雰囲気は心地よいものでした。この雰囲気は今も変わりません。

 大学院時代を思い返してよかったことは、やはり、自由に議論できる環境のもとで、文献や先生方からの様々な考え方を得て、私自身のものの考え方の幅が大幅に広がったことです。

 ただ、色んな視点から物事を考えることができるようにはなりましたが、困ることもあります。最近でいえば、もうすぐ2歳になる息子と一緒にアンパンマンを見ながら、ジャムおじさんはいつもパンを配り歩いているけれど、小麦粉や卵を買うためのお金はどうやって稼いでいるんだろうね、などと問いかけてしまいました。結果、嫌そうな顔をしている妻に気づいていない振りをしていることを妻に気づかれていると知りながら、それでも気づかぬ振りを決め込むはめになりました。

(初出: 2019年11月6日


エピソード10(吉見弓子)

 2011年3月に博士前期課程を修了した吉見弓子です。25年間勤務した京都府庁を退職後、雇用労働の分野、キャリア支援や人材育成の仕事に携わったこと、また、公務員在職中から感じていた「自分にとって働くことの意味」を考える中から「組織と人」に興味をもつようになり、もう少し勉強したいと思っていた頃に産業関係学専攻の存在を知りました。

 丁度、人生100年時代の折返し地点、50歳を目前にした2年間、大学院で得たの学びは、私にとって「学び直し」というより「学び重ね」の貴重なものとなりました。

 大学院の授業は多くても6人程度の少人数、ほとんどの授業が一方的に教えられるいうよりはテキストを読んだ上で議論するというスタイルです。専門書を深く読み込み、みんなと議論することでとても理解が深まり、ひとつの問題を多方面から考えるというものの見方を身に付けることが出来ました。年金、税金、働き方の話等、それまでの経験から得ていた"点"の知識であったものが、それぞれが関連づけられ"面"として大局的に理解できるようになったことは大きな収穫でした。

 「働き方」を取巻く社会状況が大きく変化しているこの数年、大学院で得た知識を生かして仕事が出来ていることに大きな喜びを感じています。

 人生の後半に自分の中でコアになり、学び続ける専門分野を得られたこと、尊敬できる師や共に学ぶ友人等の人脈が出来たことは豊かな生き方につながることだと実感しています。

(初出: 2019年11月11日


エピソード11(森山智彦)

 産関大学院1期生の森山智彦と申します。院を出て10年以上が経ちましたが、振り返ると、産関は「働く」をテーマに、世界の幅広い知識、統計やフィールドワークを活用した説得的思考力、論理に裏打ちされた発信力を身につけられるフィールドだと感じます。

 私は院が設置された2003年に修士課程に入学し、2005年に修士を、2009年に博士課程を修了しました。修士への進学を決めた理由は、就活が上手くいかず自分を見つめ直した際、自分には何も武器がないことに気づき、一つでも自信が持てる力をつけたいと思ったためです。修士課程では転職やNPOの研究を行い、研究の面白さに目覚めたことと、自分の研究を少し評価してもらえたと勘違い(?)し、研究職に人生を賭けようと考え、博士課程に進学しました。博士修了後は、産関で5年間、下関市立大学で5年間教員職に就き、今年の4月から労働政策研究・研修機構という厚生労働省関連のシンクタンクで働いています。

 研究職を目指す方にとって、産関で身につけられる知識や経験の特徴を一言で言うと、学際性だと思います。経済学や社会学の本流ではないので、研究者としての立ち位置を見定めていくことは非常に悩ましいのですが、見方を変えれば、「働く」という社会的にも学術的にも注目度の高い分野で、学問の枠に縛られず最適だと思われる考え方と方法でアプローチしていくことができます。

 また、数値データの統計分析とフィールドワークによる質的分析の両方を学べることも強みです。私は統計分析を使うことが多いのですが、統計は大まかな傾向をつかんだり机の上で世界の情報を把握・分析することには適しています。しかし、詳細なメカニズムを紐解こうと思うと統計分析だけでは限界があり、フィールドワークを重ねる必要が出てきます。

 例えばAIが雇用を奪うという話がありますが、細かい仕事内容(タスク)にまで踏み込んでどのような変化が生じているのかを理解しようと思うと、実際の現場の方のお話から学ばなければ分からないことが多々あります。この両手法を学べるカリキュラムを備えている大学院は多くありません。

 社会人の方にとっては、他の方々も書かれているように、本来のお仕事に加えて大学院に通うことは非常にハードルが高いと思います。加えて、大学での学びは直接ビジネスに結びつかないと私もついこの間まで考えていました。しかし、先日大手の会計事務所の方と飲む機会があり、特にコンサルティングや人材関係のお仕事をされている方にとって、産関の院で得られる専門知識や方法とビジネスには非常に親和性があると教えていただきました。これらの業界以外にも、部下を指導する立場に立った方、チームをまとめる立場に立った方の悩みを解決に導く知識・知見が得られると考えています。

 日本の社会で2年間(5年間?)大学院で学ぶことは遠回りのようにも思えますが、決して無駄にはならない、人生を豊かにする遠回りになるのではないでしょうか。

(初出: 2019年11月14日


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